◆風俗カメラマンの憂鬱◆2010.7.7.
実は2年前ぐらいに以前の会社を辞めて、現在はフリーランスっぽい仕事してるんですが、その間、いわゆる風俗カメラマンの仕事をしていました。風俗嬢の友人はけっこーいますが、そもそも風俗に行ったことないから、そのお店に入るのもドキドキ〜みたいな。昼間からそーゆー店に出入りしてるとこは、あまり知り合いには見られたくないけどねー。しかし、いやースゴイね。あの大変さは2度としたくない。しかも、「たかが風俗のカメラマンだろ?」って、軽視化されやすいんですが、とんでもない!こんなシビアで厳しい世界だったの?!みたいな。普通のカメラマンより厳しい。戦場カメラマンぐらいかも。ちょっとでもいい写真じゃなかったら、強面の人たちが会社に怒鳴り込んでくるし、写真技術や機材のこともプロ並みに詳しいから、専門的なこと適当に言ってごまかすなんてのもできない。まず、今までやってた撮影の仕事って、カメラマン=撮る人。モデル=撮られる人。っていう、わかりやすい方式の中で、お互いが「お願いします」の中、お互いで「いい物を創ろう」という気持ちの中で創造されていく物だったんですが、風俗カメラマンは根本的にその関係性が違う!まず、モデルである風俗嬢は撮られる気がない。こんなヒマあるんなら、客の一人でもとったほうがお金になるし。みたいな。たいがいホテルやその店が借りているマンションの一室、あるいはその店の事務所や、女の子らの待機所(ワンルームマンション)等で撮影するわけで、基本的にカメラマンも一人で現場に行くので、スタッフもいないから、多いし重い機材を一人で持ってくのも大変。たとえばホテルの一室で撮影準備に取りかかる。予定時間になっても女の子がこない。早くしてくんないと、次の現場に間に合わないぞ、おい。なんて思ってたら女の子が来て、さぁ、さっさと撮って終わらそうと思ったら、「店からここに行けって言われただけで、撮影とか聞いてないねんけど」。え?いや、そんなこと俺に言われても。さらに「え、脱ぐの?マジでー?」って言う女の子。いや、俺はキミが脱ごうが脱ぐまいが、どーでもいいんよ。ただ、店の人からヌードって言われてるから、それを撮らないと店の人に俺が怒られますよね?つーか、タメ口かよ!そう、今までの撮影の仕事現場では、モデルが敬語、俺がタメ口。しかーし!風俗カメラマン界は、基本、女の子がタメ口。俺がほぼ敬語。こんなんはまだ全然マシで、他のカメラマンの体験談を聞くと、「キミ、ほんとにかわいいね〜、今度食事でも行こうね〜」みたいなよくある撮影風景に出てくるセリフなんだが、その女の子が店に帰ってセクハラされた。飲みに誘われたって言ったもんだから、店の強面の方々が会社に乗り込んできて、「どいつじゃ、おらー!」みたいな惨事を招いたらしい。そんな話を聞かされると、「な、なんも言えねー」って北島選手バリにしゃべりたくない。つまり、どこに地雷があるかわからない状況で言葉を選びながら、その女の子を讃え、うしろでずっとスゲー目力の強面のおにいさん方にのぞき込まれながら、なおかついい写真を撮影していかなければならない。・・・過酷!店の強面の人がずっと付きっきりの撮影現場もやりにくいが、女の子と2人きりの現場もそーゆー危険がいっぱいなわけで。もし外で偶然会っても、女の子に声をかけてはいけない。当然ですけどね。「あ、カメラマンのおにいさんや!どこ行くのー」と、逆はよくあったけどね。
とても華やかにキラキラのティアラを付けて、シルクのぶかぶかのドレスを引きずって登場する気品とかわいさのあるお店もあれば、その逆もあるわけで。ある熟女系の風俗店の撮影の時は、お姉さん(オバサマ)たちが1店舗で5人連続撮影とかで、時間ごとに次々とお姉さん方を撮影していく。ある人は恥ずかしがり、従順な言われるがままの女優さんバリにキレイな人もいれば、ある人はスゲーきれいな外人がモデルのパンストの袋の切り抜きを俺に手渡して、「こんなん撮って」って言ってくる戦車みたいな人もいて。まず、スタイルも顔も髪の色も肌の色も場所もなにもかも違うし、「プロやったら撮れるやろ?」みたいに言われてもー!しかしそこは、その日いっしょに行ったベテランカメラマンさんのナイスな返し「あー、この写真は今日持ってきてる機材ではちょっと無理ですねー」う、うまい!さすがは逃げ方もプロ。そのお姉さんも「あ、そ。じゃ、しゃーないな」と、あきらめた。そんで、俺が悪戦苦闘しながら撮ってたら、「ボクちゃんはどんなん撮ってくれんの〜。ちゃんとキレイに撮ってよ〜」って、ボクちゃんて・・・。たぶんヘタしたら、あなたより俺のほうが年上かもしれません。
また、ある店では18歳になったばっかりぐらいの女の子たち4人のクリスマス用の裸の集合写真の撮影の時、そのうちの2人の腕や脚がためらいキズだらけ。2、30本ぐらいなら別に驚きもしないが、100本以上が何セットあんの?!みたいな。しかも4人のうち2人がそれって。つまりもう50%の子がそーゆー子の店って・・・。んー、心がいたい。
いえいえいえいえ、これはまだ序章。あるアンダーワールドな街の現場に行った時のこと、そのお店の待機所(薄暗いワンルームマンション)に案内され、その真っ暗で何も見えないワンルームで、窓があるのに外からの光はなく、冬の18時頃だったのでもう完全に真っ暗なその部屋。薄暗く青白い蛍光灯がチカチカ音をたてながら鈍く点くと、よくわかんない段ボールが数個と、背景紙用の布キレが数点、空き缶やタバコの吸いがら、ほこりっぽく、カビ臭く、ただでさえ憂鬱なその空間。それでも撮影機材を準備して、モデルが来るのを待つこと数分。あ、ちなみにここも熟女系の店なんだけど、なんかもういろいろ疲れた感じというか、訳ありありな雰囲気プンプンさせながらやってきた熟女様。「私なんて・・・」みたいなことをよく言う人で、「いえいえ、大丈夫ですよ」と、キレイの三文字が言えないまま撮影終了。じゃ、お次の方〜。で、登場したのがもう肩幅の二倍の大きさの金髪というか下痢色というか、とにかくスゲー髪の毛した小さいお姉さんが来て、「なぁ、た、たらこふうてええ」と、呂律が回ってないというか、よだれ溜まりすぎみたいな感じの口元で、よく聞き取れない。脱ぐとき、恥ずかしながらドキドキして脱ぐ人もいれば、「あーい、あーい」と淡々と服を脱いでいくこの姉さん。脱いだ服をうしろに置こうとしたそのお姉さんの小さな背中には大きすぎるほどの鮮やかな、はい、鯉の滝登り〜。「一刻も早くここから出たい!」って思った。もーなんつーかー外の空気吸いたい・・・。なんつーんだろ、あの荒廃した空間。もう空気までが濁ってて、重い。いや、別に墨が入ってようが入ってまいが、そんなことじゃなくて、あのアンダーワールドの中のアンダーワールドに自分が落ちていった気がしたんだろか?あの場所や空気や匂いや薄暗さなんかと、そのお姉さんがベストマッチ賞!なんか、腐のオーラに飲み込まれそうで怖かった。いやいや、そりゃーいろんな世界で生きてきましたし、アウトサイダーな生活もいろいろしてアウトサイダーな連中もまわりにはたくさんいましたよ。でも、なんか違うんです。そのお姉さんやその場所とか、あらゆる要素が融合して、目に見える物とは違う、目に見えない恐怖。例えば、キレイな女性の家に初めて行ったら、灯りはロウソクで、部屋着に着替えた彼女の肌にはよくわかんないTATOOがいっぱいあって、よくわかんないキズもいっぱいあって、よくわかんない物もいっぱいあって、よくわかんないこと言い出したと思ったら、よくわかんないおまじないもたいな言葉をつぶやきだして、冷静に考えるとすごく偏った思想の宗教家だった。みたいな?って、ほとんど目に見える物じゃん・・・。なんか、違うけど、とにかく「一刻も早くこの場を立ち去りたい」と目に見えない恐怖の何かに飲み込まれそうになる感覚。あの感覚、ちょっと俺には特殊すぎ。で、1〜2ヶ月で辞めた。
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